Special Interview

スペシャルマンスリーインタビュー

「必要不可欠な存在」。頼もしいメンタルの専門家、小沼健太郎キャリアディレクター。
中島進護選手も登場!

小沼健太郎

アークスでは、選手がみずからの成長について語るとき、高い頻度であるスタッフの名前が登場します。

「小沼さんと話して気付いたことですが・・・」
「小沼キャリアディレクターからラグビーと会社の将来像を聞かれて・・・」

キャリアディレクターの小沼健太郎さん。
2016年シーズンにメンタルトレーナーとしてスタッフ入りし、今年で5年目を迎えます。
小沼さんは現在、選手の自律的なキャリア形成をサポートする「キャリアディレクター」として、定期的な1対1のミーティングなどを通し、選手と深く関わっています。

千葉県出身の小沼さんは、異色の経歴の持ち主です。
小中学校でサッカー、高校時代はボクシングを経験し、その後プロの競輪選手として14年のキャリアを重ねました。
元競輪選手の小沼さんですが、厳しい勝負の世界で悪戦苦闘したその14年間こそ、現職の原点でした。

キャリアディレクターの仕事とは? そして、なぜ小沼さんとの会話を通じて選手は成長していくのか?

今回はそんな数々の疑問をぶつけると共に、小沼さんとの対話で大きく成長したという、6年目のFL中島進護選手がインタビューの後半に登場!
「小沼さんにもっと早く出会えることができたらよかったです。チームに必要不可欠な存在です」(中島選手)

はたして中島選手はどんな成長を遂げたのでしょうか?
コロナ禍でストレスが増えた今だからこそ頼もしい、「メンタルの専門家」にお話を伺いました。
(取材日:2020年7月上旬)

この世で唯一?
「キャリアディレクター」の仕事

まず「キャリアディレクター」について教えてください。

進路相談の先生みたいな感じかもしれません。

シャイニングアークスは「ビクトリー(Victory)」と「バリュー(Value)」という2つのVを追求していますが、選手もラガーマンと会社員という2つの顔があります。

彼らは選手をしながら両方のキャリアでの将来を自分で決めなければなりません。私は選手のそうした2つのキャリア形成をメンタルトレーナーという専門性を活かして、共に成長しながら創っていく、という感じです。

具体的にはどんな仕事をするのでしょうか?

僕はチームに常駐して、主に選手の“目標管理”をしています。

資料を作成してチーム全体に伝えることもありますが、基本的には1対1で伝えます。常駐して練習も試合も見ているので、試合結果などフィードバックはしやすいです。

対話して終わりではなく、常に実践しフィードバックして――というその繰り返しをやっています。そういう意味では常駐であることは強みです

チームは地域密着ですが、僕は“選手密着”ですね(笑)。

1対1のミーティングではメンタルの話をするのですか?

メンタルだけの話をするわけではありません。たとえば僕は所属が病院で、管理職として教育を担当していますが、チームのメディカルスタッフは僕の部下なので、相談を受けてメディカルスタッフに繋ぐこともあります。

「便利屋」というわけではありませんが、困ったことがあれば僕が受けて、選手のキャリアを考えながら「じゃあこれはこのスタッフ」といった振り分けもします。

キャリアディレクターとして達成感を感じる瞬間はあるのでしょうか?

練習や試合を見ながら「変わったな」といつもこっそり見ています(笑)。

ただ僕のおかげで強くなるのではなく、成長するのは選手自身です。

すごく数字に変えづらい仕事ではありますが、僕としてはケガでつらい時も一緒に作業をしているので、目標を達成した時は嬉しいですよね。

ラグビーにおけるメンタルの重要性

メンタルを強くしたり自分自身を知ることで、選手はラグビーが上手くなるのでしょうか?

自分自身を知ることでラグビーの競技性向上につながるという部分ですが、ラグビーは予想外のスポーツですよね。つねに失敗の連続です。

そこに対して自分の感情をどうコントロールするのか、次のチャレンジは何をするのか、試合中に目標設定を瞬間的に行わなければいけません。

それをするためには普段から常に意識を自分自身のほうに向けて、セルフマネジメントしておくことが必要です。その結果、正しい目標設定を行うことができ、自分のプレーに対しても良いアプローチができるという部分はあると思います。

キャリアディレクターとしてのポリシーを教えてください。

選手をリスペクトすることですね。

選手を目標達成した人として扱ってあげないと、選手も自分自身をそう扱えないですよね。成績が出ない人として扱って「それがダメなんだよ」とは言いません。

チームのスタッフが心掛けている「プレイヤー・フューチャーズ・ファースト」(選手の未来を第一に)というポリシーもそういった部分です。
とにかく選手の未来を考えて、じゃあどうするべきかということを一緒に創っていく。まずは選手をリスペクトすることからです。

ご自身が心掛けていることはありますか?

選手にふさわしい人物になるということです。

選手に「セルフマネージメントしてください」と言って、自分ができていなかったら問題です。自分自身にもしっかりと目標を持って目標達成する。
そう心がけていますし、チームは「インスパイア」を課題にしているので、僕も人に影響を与えるというところを常に意識してやっています。

「挫折の数なら誰にも負けません」
競輪選手時代の苦悩が原点

競輪選手時代の経験はいまの仕事に活きていますか?

プロの競輪選手を14、5年やりましたが、プロの時は毎日が挫折でした。挫折の数だけは自信があります(笑)。

どんな挫折だったのですか?

勝ちたいけど勝てなかったこともありますし、僕の場合はケガが多かった。「なんでだろう」とずっと思っていたのですが、そこで僕が強くなろうと思って学んだのがメンタルでした。
メンタルを学んだら成績が安定しました。一貫して自分の能力を発揮することができました。
僕には効果がありました。

そういう意味でいうと、当時の僕が「いたらいいな」と思う人になりたい、ということは意識しています。

メンタルトレーナーの原点は競輪選手時代の苦悩だったんですね。

そうですね。基本的にいま選手にやってもらってる事は、僕がすでに「実験」をしています(笑)。「あの店美味しいよ。行ったことないけど」ということはしていません。

コロナ禍におけるメンタル強化のススメ

ちなみに新型コロナの影響で精神的に落ち込んでいる人も多いと思いますが、なにかひとつアドバイスを送るとすると?

日記を書くのはいいかもしれませんね。

自分のことを言語化してみる、見える化してみる。言葉に起こすと理解が進みます。
縦軸のロジックができるし、横軸に自分の共通点、相違点をそこに乗せられます。言語化する人は頭の中の整理が上手いですね。

オススメの習慣もぜひ教えてください。

僕は本をこまめに読みます。本を10ページくらい読んで、また違う本を3分くらいで10ページくらい読む。
その情報をすぐに「こんなことが書いてあった」「僕はこれからこうします」と周囲にアウトプットする。アウトプットのトレーニングです。

学校教育はだいだいインプットとアウトプットの比率は「9」対「1」くらいかもしれませんが、選手にはアウトプット前提の行動をしてもらい「7」対「3」くらいにしようと言っています。

僕自身も「食べたものをすぐに出す」くらいの感じでアウトプットをトレーニングしています。

小沼さんが感じた「成長した選手」。
中島進護選手登場!

ここから6年目の中島進護選手にも来て頂きました!小沼さんに「成長した選手」として推薦して頂いた中島選手ですが、どのように成長したのでしょうか?

小沼:進護とは4年ぐらい一緒にやっていますが、今では自分で自分の目標を作って、自分で行動して、自分で提案もしてきます。以前は目の前のことだけをやっていましたが、視点がすごく高くなった。

最初は試合に出場することも大変でしたが、今は試合で活躍して、チームのMVPも獲っています。自分自身が視点を上げていく作業をしてきた成果ですね。

中島選手、小沼さんと出会った4年前を覚えていますか?

中島:4年前に健太郎さん(小沼キャリアディレクター)と出会いましたが、最初は正直「メンタルトレーニングなんか必要ない」と思っていました。目の前のことをつぶしていけばどうにかなると思っていました。

ただその結果、試合に出場できないという壁にぶつかって、そういった時にどうするかというトレーニングを4年間ずっと積んできました。その結果リーダーの一人にもなり、試合にも出場できるようになりました。健太郎さんに成長させて頂きましたね。

小沼キャリアディレクターは予言者!?

中島選手から見て、小沼さんはどんな方ですか?

中島:「ミスター都市伝説」みたいな感じですよね(笑)。なんでも予言します。

4年前に「必ず3年後に君はリーダ―グループに入る」とずっと言われていたんですが、自分の中では「いやいやいや」と。リーダー的存在はチームにたくさんいるし、絶対にそうはならないと思っていましたが、いまその予言通りになっています。

小沼さんはどのような意図で「リーダーになる」と言っていたのですか?

小沼:人は先天的能力と後天的能力あって、彼と話していると後天的なものが伸びていませんでした。彼はリーダーになれる素質を持っていたので、それを生かせば当然そうなる、と。

さきほど話しましたが、僕は進護をリスペクトして「将来リーダーになる選手」として扱い続けました。それを彼は「予言」と表現しているのですね。

ちなみに僕はこのチームは日本一になると信じ込んでいるので、みんなが日本一になる選手だと思って扱っています。だから日本一になれば嬉しいですけど、日本一になっても驚かないと思います。そうなると思っているので。

1対1の時間は「すごく大事な時間」

いま小沼キャリアディレクターと、どんな頻度で対話しているのですか?

中島:2週間に1回くらいですね。
オンラインでも話してきましたが、すごく大事な時間です。会社のことも話します。困ったことがあると自分でため込んで発散する機会がないのですが、毎回いろいろな視点でいろいろな話をしてくれます。

健太郎さんにもっと早い時から出会っておけばよかったな、という感じですね。

もし小沼さんに出会っておらず、「目の前のことをつぶしていけばいい」と考えて突き進んでいたら、どうなっていたと思いますか?

中島:トップリーグに出場できないまま引退していたんじゃないかなと思いますね。最初の頃は試合に出られる気がしなかったので。

小沼さん、ご自身の仕事についてあらためて言葉にすると?

小沼:選手をリスペクトして日本一の選手として扱い、いかに一緒に歩んでいくか、ということしかやっていないと思います。皆さんや選手のおかげで、ありがたいことに5年目になって感謝しかありません。

これからもチームのみんなと一緒に作っていく、というところを意識していきたいですね。最近はみんなが成長してくれているので、微笑ましいです(笑)。

中島選手、あらためて小沼さんはチームにおいてどんな存在でしょうか?

中島:プロの元競輪選手でいろいろなことを経験している健太郎さんから言われると、やはりすごく身に染みます。いろいろな視点から思いも寄らない話もしてくれて勉強になります。

いま若手の選手が小沼さんとのやりとりのなかで、どんどんレベルアップしてくれています。チームとして本当に良いことだと思います。本当に必要不可欠な存在だと思います。

お二人とも今日はありがとうございました!

小沼・中島:ありがとうございました。