フランカー / キャプテン
金 正奎Shokei Kin
日本代表デビューを飾るなど大きく飛躍した2016年に続き、シャイニングアークスが誇る生粋のキャプテンは、2017年上半期も大忙し。南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」ではサンウルブズの一員として、今春のアジア王者決定戦「アジアラグビーチャンピオンシップ」では日本代表として活躍。
“日本ラグビー変革期”の最前線で奮闘を続ける金正奎キャプテンが、激動の上半期、そしてトップリーグの新シーズン展望までを“アツく”語ってくれました。
南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」に参加するサンウルブズの一員として、今年も世界の強豪チームと戦っています。個人としての手応えはいかがですか?
あります。「小さいから弱い」と思われがちかもしれませんが、外国人選手はなかなか低いプレーができません。小さいからこそできることが、やっぱりあります。
7番(フランカー)は、布巻(・峻介/現パナソニック)選手だったり、松橋(・周平/現リコー)選手だったり、僕よりちょっと大きいくらいの選手が出てきています。それぞれ持ち味は違いますが、正直、僕も負けてられないなと思っています。
サンウルブズがニュージーランド・アルゼンチンに遠征中だった4月中旬から5月上旬は、日本代表として「アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)」(日本、香港、韓国による総当たり戦)に参加しました。
ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)から「1クール目のスーパーラグビーが終わったらアジア(ARC)に参加してほしい」と言われました。
韓国代表も香港代表も、以前より強くなったように見受けられました。
僕は去年のアジア(ARC)も経験しているのですが、全然違いましたね。僕は香港との試合にしか出ていないのですが、香港は特にセットプレーが強くなっていました。チームとして成熟しているように感じました。強化をしっかりやっているので、嫌なチームになっています。
日本代表のジョセフ ヘッドコーチからは、どんなプレーを期待されていますか?
ジェイミーからは「7番はベストタックラーであってほしい」と常々言われています。「タックルの正確性などを磨いてほしい」と。そこは僕自身も課題だと思っています。
タックルが課題ですか?
細かいところで抜かれたり、(タックルに)行っているんですけど弾かれたりしているので、スーパーラグビーではそれが顕著に表れています。僕自身も満足はしていないです。全部が全部、下に入って勝てる相手ではないので、もっと(タックルの)引き出しを増やせるように努力したいです。
振り返ると、サンウルブズへの招集発表は今年1月でした。招集に対しての返事は即答でしたか?
チャンスは何回も与えられるわけではないのですぐ掴まないといけません。「行きます」と即答しました。
過去にチャンスを掴めなかった後悔があるのですか?
後悔ではなく、2016年にジュニア・ジャパン(大学生を中心とした準日本代表チーム)に呼ばれたのですが、社会人が数人(金選手、石橋拓也選手ら5選手)しかいないということで、今の自分にとってそれは必要なことなのか、いろいろ迷いました。でも最終的には、FWコーチの大久保直弥さんに「絶対に行ったほうがいい」「こんなチャンスは誰にでも与えられるわけではない」と言われて参加しました。
そこで結果を残したおかげで、(2016年の)アジアラグビーチャンピオンシップに呼ばれて、6月のテストマッチにも呼ばれ、さらにサンウルブズにも呼ばれ。まずジュニア・ジャパンのチャンスを掴んでいなかったら、ああはならなかったです。あらためて、チャンスは自分で掴みに行ってその権利を得るべきだなと思います。
今年2月の開幕節ハリケーンズ(ニュージーランド)戦では、前半35分から途中出場してトライも決めました。
振り返ると、一番伸び伸びやっていた時期かなと思います。大敗しているなかでも自分の色を出せて、自分を100%表現できました。スーパーラグビーでは初トライだったので、思い入れはあります。
シンガポールでキングズ(南アフリカ)と第2節を戦ったのち、そのまま南アフリカ遠征へ向かいました。長距離移動はやはり大変ですか?
10数時間(飛行機に)乗っているので、体自体は疲れもきますし、時差もあります。昼間にすごく眠たくなったりするので、そこは辛かったですね。
練習中に眠たくなってくる?
練習中は大丈夫なんですが、練習後にすごく眠たくなったりして。でも寝ることができないので、頑張って外に出掛けたり。あとは、プールに入っていると眠くならないのでプールに入ったり、近くのショッピングモールでコーヒーを飲んだり。良い経験ができました。
南アフリカ遠征での食事はいかがでしたか?
メニューの偏りは強かったですね。シーフードは美味しかったです。
サンウルブズは第14節を終えた時点で1勝11敗。勝利を求める声は日増しに強くなっているようです。
僕は結果が全てだと思います。僕たちが違うスポーツを見てそう思うように、当然のことなのかなと。勝てば応援してくれるし、負ければ言われてしまうのも、応援してくれているからだと思っています。
昨シーズンのトップリーグは、怪我のリハビリからのスタートでしたね。
サンウルブズとして参加した南アフリカのブルズ(第16節/プレトリア)との試合でした。(後半24分に)途中出場して2分くらいで、ボールをキャリーしたら後ろと横からタックルを受けて、左足が残ったまま手前に倒されて。本当に言葉にできないくらい痛くて、やった瞬間に「ラグビーはもうダメかな」と思ったりしました。これまでヒジの脱臼くらいで、あまり大怪我をしたことがなく、手術も初めてでした。
どんな診断を受けましたか?
左ヒザの内側靭帯完全断裂。あともう2カ所手術しました。(足首の)内側の三角靭帯と、脛骨と腓骨を閉じている靭帯です。
キャプテンとしては1年目だっただけに、難しい舵取りを迫られたのでは?
ジュニア・ジャパンや6月の日本代表、そしてサンウルブズといなかった期間は、他の選手たちがリーダーシップをとってやってくれていました。同期の須藤拓輝であったり、先輩でいうと栗原大介さん、鶴谷昌隆さん、鶴田諒さん。いろんな人が僕とは違ったリーダーシップを発揮して、そのまま引き続きやってくれました。チームメイトを頼もしく思いましたし、それによってチームが一段とレベルアップしたと思います。
昨シーズンのトップリーグは、11月のウィンドウマンス(国際試合月間)までの前半戦を6勝3敗で折り返しました。
とても勢いがあって、外から見ていても「めちゃくちゃ強いな」と思いました。(小倉)順平だったり庵奥(翔太)だったり、そういった若手選手がチームにいい影響を与えてくれていました。中堅やベテランの選手も触発されて、向上心をもってラグビーをしたことが、良かったのかなと思います。
復帰戦は、12月3日の第10節サントリー戦になりました。
周囲の方々の力を借りたおかげで、予定よりも早く復帰できました。去年から小沼健太郎さんというメンタルトレーナーの方が来てくれていて、怪我をした時は特にお世話になりました。なかなかそういったところ(メンタルトレーニング)を強化するチームは少ないと思うんですが、実際にやってみると本当に必要なことでした。そういう機会がないと、自分自身を分析することをしないと思うので。
第10節以降の後半戦はどうでしたか?
勝つべき試合で勝てなかった、ということがありました。痛い敗戦が2、3試合あったりして、そこは悔やまれます。ですが、過去最高順位の5位で終われたことはすごく良いことで、今年はそれ以上の目標を立てることができます。
社内での応援の声はいかがですか?
すごく応援してくれます。本当に有り難いです。
社内で一番熱烈に応援してくれる方というと?
すべての人に感謝しているのですが、前本部長の中田勝己副社長は、ずっと応援してくれていて、特別な想いがあります。チームが勝っても負けても、同じように親身になって接してくれます。相談に対しても100%でアドバイスしてくれますし、本当に素敵な方だと思いました。
今シーズンのトップリーグでの目標は?
優勝です。そこを目指さないといけないチームだと思いますし、全員がそこに対して向上心を持ってやってほしいので、優勝です。
昨シーズンの総合5位からさらに上を目指すには、何が必要なのでしょうか?
現在のシャイニングアークスは、セットプレー(スクラムやラインアウト)が一番の課題となっています。どのチームもセットプレーの強化はやってきているのでまだ差はあります。もっともっと頑張らないと、他との差は一向に埋まらないと思います。
あとはロブ(・ペニー ヘッドコーチ)が提示してくれる素晴らしい戦術があるので、それをやりきることです。毎年毎年、結果はついてきているので、そこにセットプレーの力だったり、プラスアルファが加われば、ベスト4は十分に狙えるチームになると思います。
それでは最後に、新シーズンに期待するファンの皆さまへメッセージを。
昨シーズンよりも必ず良い成績を残しますし、そこに向けての練習もしっかりやっていき、ファンのみなさんから愛されるようなチームになっていけたらと思います。僕たち自身も、シーズンが終わった時に「最高のチーム」と言えるようなチーム作りをしていきます。結果を残して、いつも応援してくれるみなさんに恩返しできるように、かつファンのみなさんから愛されるように頑張っていきます。よろしくお願い致します。