CloseUp Interview

クローズアップインタビュー

スクラムコーチ

斉藤展士Nobuji Saito

NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)の斉藤展士スクラムコーチが、2018年2月、フランス国内1部リーグに所属する「ポー(セクション・パロワーズ)」へ一週間の研修旅行を行ないました。

斉藤スクラムコーチが同チームを訪れるのは、昨年4月に続いて2回目。果たして今回はどんな旅になったのでしょうか。
アークスのプロップとして6シーズンを過ごし、スクラム専任コーチとして2年目を迎えた斉藤スクラムコーチに、フランスでの学びから帰国後の和歌山合宿まで、多岐にわたりお話を伺いました。

現役時代お手本にした
カール・ハイマンコーチの元へ

昨年に続いてフランス南部の都市・ポー(Pau)を訪れ、フランス国内リーグの強豪セクション・パロワーズ(ポー)に帯同しました。

去年に続いて、コーチング全般の勉強で行きました。その中でも特にスクラムを教えてほしい、という感じですね。

期間はいつからいつまで?

2月19日(月)から2月26日(月)までです。

パリから国内乗継便でポーへ行き、19日の夜にポーに着いて、20日の朝のジムセッション(筋力トレーニングなど)から練習を見学しました。
天候はずっと雨でしたね。ポーは綺麗な街で、晴れていると空港に降りたときにピレネー山脈が見えるんですけど、まったく見えませんでした(笑)。

セクション・パロワーズのスクラムトレーニングの様子

前回の初訪問は、選手時代からスクラムのお手本にしていたカール・ハイマン氏(元NZ代表プロップ)がポーでFWコーチをしていることを知り、斉藤コーチ自身がチームへアプローチしたことで実現しました。今回はどのような経緯でポーへ行くことに?

個人的にカール・ハイマン(FWコーチ)と連絡を取り合っていて、「次はいつ来る?」という話をもらっていました。
それで昨シーズンの終盤に「来年また行きたい」という話をしたら、「いつでもいいから日にちだけ教えてほしい」と。

チームは歓迎ムードでしたか?

向こうは2回目なのでウェルカムでした。嬉しかったようですね。「日本人がこんなところまで来た」と。(注:ポーはフランス南西部に位置する人口約8万人の小都市)

チームのプレジデントと話をしたのですが、「これから来たい時にいつでも来ていいし、カール(・ハイマンFWコーチ)と連絡を取り合って、宿泊先もカールの家に泊まれ」と言われました。

ポーはフランス国内1部リーグ「TOP14」の強豪ですが、実際はどんなチームなのでしょうか?

いまTOP14で6位につけていて(取材日は3月26日)、しっかり結果を残しているので楽しみなチームです。

選手ではトム・テイラー、コリン・スレード、ジェイミー・マッキントッシュ(いずれも元NZ代表)、ベン・モーウェン(元豪州代表)もいます。
よくニコニコして近づいてきてくれたのは、コンラッド・スミス(NZ代表94キャップのスター選手)ですね。こちらは「おう、スーパースター」と言って(笑)。物静かな選手でしたね。

カール・ハイマンFWコーチ(左)、ジェイミー・マッキントッシュ選手(右)との豪華3ショット

ほかにポーというチームの特徴というと?

ポーの良い所はいろんな人種がいることです。
コーチングスタッフは、ニュージーランド、フランス、アルゼンチンのコーチがいました。アルゼンチン人はアンドレス(Andrés Bordoy)といって、FWのアシスタントコーチです。

ポーのヘッドコーチ(HC)はサイモン・マニックス(Simon Mannix)で、ロブ(ペニーHC)の元部下なんですよ。マニックスとはトップリーグの試合映像を一緒に観たりしました。
ロブとマニックスは一緒にやっていたので戦術が似ていて、良い話ができました。ポーのラグビースタイルは、うちのラグビーにもうすこしフィジカルが加わったような感じです。すごく良いと思いますね。

そしてポーのFWコーチは、斉藤スクラムコーチが現役時代にプレーを参考にしてきたカール・ハイマン氏。

今回はカール・ハイマンと過ごした時間が長かったので良かったです。彼のスクラムの組み方というのは、自分が大きい選手を教えるときのポイントになっています。

ハイマン氏のスクラムに注目していたのは、近畿大学時代から?

はい。同じ試合ばかり観ていましたね。実家のどこかにVHSのビデオがあると思います。同じビデオの、同じスクラムを、繰り返し観ていました。

選手の構成も多国籍なのでしょうか?

ニュージーランドとフランスが混ざっていますね。

そこで彼らが使う言葉は、フランス語が100%じゃなくて、英語もミックスさせて使っていました。英語の中にフランス語を入れたり、フランス語の中に英語を入れたり。

その国の言葉を使うのは、相手をリスペクトするという意味で大事だなと思いましたね。上手い下手ではなくて。自分もフランス語は下手ですけど、冗談で使ったりしていました。

どんなフランス語を使っていたのですか?

フランス語は挨拶くらいです。「ボンジュール(こんにちは)」「サリュー(やあ)「ア・ドゥマン(またね)」「サヴァ・ヴィアン(元気です)」「メルシー(ありがとう)」。

グラウンド外で選手たちとの交流はありましたか?

フォワード会に出ました。練習に初参加したその日(20日火曜日)にフォワード会に招待してくれて。ポーの街のバーでした。そこで「一曲歌え」と言われたので、『上を向いて歩こう』を歌ってきましたよ(笑)。

地元クラブチームと記念撮影の様子(2列目左から2番目が斉藤コーチ)

2017年シーズン、11月に猛特訓し
マイボール獲得率改善

2017年シーズンのNTTコムのスクラムについても話をしたそうですね。

去年スクラムを勉強させてもらったので、(2017年シーズンの)成果の報告をしたいと思っていました。

昨年チームに初合流したのは6月の宮崎キャンプでした。

昨シーズンの前半はスクラムを押しまくっていたんですが、成功率(マイボール獲得率)自体は高くなかったですね。

シーズン前半はロブ(ペニー・HC)が思うようなスクラムに近づけようと思っていたんですが、自分の組みたいスクラムはどうなんだと思い、アプローチの仕方を変えました。

フランスで勉強してきたことも出したいので、コカ・コーラ戦(第9節/2017年10月21日)の前に「俺はこういうスクラムを作りたい」という資料を一週間で作って、ロブに送りました。

それでロブに「(ウィンドウマンスの)11月に時間をあげるからやってくれ」と言われて。トップリーグ休止期間に時間をもらいました。それがあの去年11月のスクラムの猛特訓です。

昨年11月以降のスクラムではマイボール獲得率が改善しました。

ポーには「大変な時期もあったけど、しっかりできた」と報告しました。

ウィンドウマンス期間の猛特訓の成果を見せ付けるアークスのFW陣(2017年12月2日神戸製鋼戦・秩父宮)

スクラム練習では
文化の違いから新たな発見

ポーではもちろんスクラム練習を見学した?

スクラムを見たのは木曜日(22日)でした。6対6を組んで、それから8対8を組んで、という感じでした。雨で地面の状態は相当悪かったです。

発見はけっこうありましたね。自分と考えていることが似ていることもあって、いろいろ話をしました。今年のスクラムにはそのエッセンスが反映されていると思います。

フランスではスクラム時のレフリーコール「クラウチ、バインド、セット」は何と言うのですか?

「フレクション(Flexion=クラウチ)」「リーエ(lier=バインド)」「ジュー(jeu=セット)」です。

FWコーチはNZ出身のハイマン氏と、アルゼンチン出身のアンドレス氏。彼らのコーチングから学んだことは?

アルゼンチン人のアンドレスはめちゃめちゃ明るいんですけど、けっこう細かくて。その細かさの部分で、けっこうNZのスキルと合わないんです。

たとえばものすごく大きい枠でいうと、ハイマンはスクラム練習は「6対6で組めばいい」。アンドレスは「8対8でもっと組め」と。それで30分くらい意見を交換しているんですよ。そういうやりとりを聞いているだけでも勉強になりました。

今回は2月19日(月)から26日(月までの一週間の滞在でしたが、どんなチームスケジュールだったのですか?

20日(火)は2部練習。21日の水曜日はリカバリーなんですけど、治療する選手とアカデミーの選手はスキル練習をするので、そこへ行きました。22日の木曜日が2部練習で、金曜日がキャプテンズラン。土曜日が試合です。

その試合というのはTOP14の試合?

そうです。相手はラシン92(パリを拠点とする強豪)で、勝ちましたよ。その試合も朝から晩まで帯同させてもらいました。チームミーティングにも入れてくれました。

その試合はナイトゲームだったんですが、選手たちは昼間に集まって、試合前に軽食をして会場へ行っていました。去年もそんな感じでした。

試合当日の昼にチームで集まってランチをする。面白いルーティンですね。

ランチをしながらみんなで喋って、そのあと治療する人はして。それからホテルの横の広場でウォークスルーやボールゲームをしたりして、それから軽食を摂って試合会場へ向かいます。

帰国は試合の翌日。

次の日は朝早かったです。朝8時くらいにタクシーで空港に向かって、帰ってきました。

「今年がターニングポイント」

帰国後は和歌山でフォワード合宿が行われましたね。

さっそく3月に和歌山でフォワード合宿がありました。そこでは彼(ハイマンFWコーチ)が練習していた要素も入れながらやりました。

今回(和歌山合宿)はフォワードを徹底的に鍛えるということで、すごいスケジュールを組んだんですよ。入社前の新人も呼んで。

自分としては、この合宿でフォワードの平均体重を増やしたいということがあって、結果として5日間で増えました。だいたいみんな1キロから1キロ弱増えているんですよね。

5日間でフォワードの平均体重が1キロ増。

夜9時30分に寝て、朝6時に起きて練習するみたいな。彼らの中でも和歌山合宿の練習量は自信になっています。

かなりのハードワークだったんですね。

今回のテーマは「みんなで乗りきる」「みんなでやりきる」ということでした。

足りない部分はみんなで補えばいいし、得意な分野がある選手はそこで引っ張ればいい。パーフェクトはいないからチームで乗り切りましょう、と。

コーチとしての目標は、モチベーションを下げさせないことと、100%を5日間出しきらせることでした。

練習はつらくて、みんな3日目で脚がもつれてるし。身体パンパンだから屈めない。下のボールが取れないんですよ。でもすごく良い雰囲気で終わりました。

スクラムコーチとして2年目を迎えます。この1年で成長したことを挙げるとすると?

伝え方はだいぶ成長したと思います。いまも選手たちに突っ込まれるんですけど(笑)。

スクラムの動きを解いて、キーポイントだけを言うということに関しては、自分の言葉ができ始めたかなと思います。

計画性についてもそれまでは細かくありませんでした。それに比べたらずいぶん良くなったと思います。

ペニーHC体制となって5年目のシーズンが始まっています。

今年がターニングポイントですね。中堅から上位を目指して、上昇曲線を描くためには重要です。

現役時代からお手本にしていたというカール・ハイマンコーチとの2ショット。

今シーズンのスクラムを楽しみにしています。今日はありがとうございました。